メジャーリーグのニュースでよく耳にする「故障者リスト(IL)」という言葉。
でも実際のところ、10日間ILと60日間ILの違いや、チームのロースターにどんな影響があるのか、詳しく説明できる人は意外と少ないですよね。
この記事では、MLBの故障者リスト制度を初心者にもわかりやすく整理。
10日・15日・60日間のそれぞれのルールや登録条件、そして選手の年俸やサービスタイムへの影響まで、実際の日本人メジャーリーガーの事例を交えながら詳しく解説します。
この記事を読めば、「IL入り」というニュースの裏にあるチーム戦略の意味が、すっきり理解できるようになります。
メジャーリーグの「故障者リスト(IL)」とは?基本の仕組みと目的
メジャーリーグの試合中継でよく耳にする「IL(故障者リスト)」という言葉。
これは単なる怪我人の一覧ではなく、チーム運営を支える非常に重要な制度です。
この章では、ILの仕組みや目的、そしてどんな選手が登録されるのかを整理していきます。
そもそもILって何のためにある制度?
故障者リスト(IL:Injured List)とは、怪我や病気でプレーができない選手を一時的に登録する制度です。
登録された選手は一定期間メジャーの試合に出場できませんが、治療やリハビリに専念することができます。
この制度の狙いは、選手の健康を守りつつ、チームが戦力を維持できるようにすることです。
たとえば、主力選手が故障しても、チームは代わりの選手をマイナーから昇格させて戦い続けられます。
ILは「選手の保護」と「チームの公平性維持」を両立させる制度といえるのです。
| 目的 | 内容 |
|---|---|
| 選手の保護 | 無理な出場を避け、治療・回復に専念できる |
| チームの公平性 | 代替選手を登録できるため、戦力維持が可能 |
選手がIL入りする条件と手続きの流れ
IL登録には、医師の診断による「出場不可能」の証明が必要です。
単に調子が悪いといった理由では登録できません。
客観的に怪我や病気が確認された場合にのみ、チームが申請を行い、MLB機構が承認します。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1 | チーム医師による診断 |
| 2 | GMまたはマネージャーがIL申請 |
| 3 | MLB機構が登録承認 |
| 4 | 選手は治療・リハビリ期間へ |
医師の診断なしでの登録は不可というルールがあることで、制度の悪用を防ぎ、リーグ全体の公平性を保っています。
IL制度がチーム運営に欠かせない理由
IL制度があることで、選手もチームも安心してシーズンを戦えます。
たとえば、先発投手が右肩の張りを訴えた場合、無理して登板させるよりILに登録して休ませる方が賢明です。
同時にチームは代わりの投手を昇格させて試合に臨むことができるため、戦力ダウンを最小限に抑えられます。
ILは「選手生命を守りながらチームを支える仕組み」なのです。
| 利点 | 選手側 | チーム側 |
|---|---|---|
| 短期的 | 無理をせず回復できる | 代替選手で試合を継続できる |
| 長期的 | キャリアを守れる | 戦力維持と公平性を両立 |
10日間・15日間・60日間ILの違いをわかりやすく整理
故障者リスト(IL)には期間の異なる3種類が存在します。
それぞれの期間によって、対象となる選手やチームのロースター(登録枠)への影響が変わります。
この章では、10日間・15日間・60日間のILをわかりやすく比較し、どんな場合に使い分けられているのかを見ていきましょう。
10日間IL(主に野手)の特徴と使われ方
「10日間IL」は、軽度の怪我で短期離脱が見込まれる野手が対象です。
登録期間は最低10日で、チームは代わりに他の選手を昇格させて枠を埋められます。
ただし、球団全体の40人枠には残る点が特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最短登録期間 | 10日 |
| 主な対象 | 野手 |
| 26人枠 | 外れる |
| 40人枠 | 残る |
10日間ILは短期離脱向けで、チームの入れ替えを柔軟に行える制度です。
15日間IL(投手・二刀流選手)との違い
「15日間IL」は、投手や大谷翔平選手のような二刀流選手に適用されます。
投手は登板間隔が長いため、10日では実戦復帰が難しいケースが多いからです。
15日間ILも40人枠には残るため、チームは代わりの投手を昇格させてやりくりします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最短登録期間 | 15日 |
| 主な対象 | 投手・二刀流 |
| 26人枠 | 外れる |
| 40人枠 | 残る |
登板間隔の関係で、投手は15日間ILが基本という点を覚えておきましょう。
60日間IL(重傷者用)は40人枠にも影響?
「60日間IL」は、長期離脱が確実な重傷者を対象とした制度です。
骨折や靭帯損傷などでシーズンの大半を欠場するような場合に使われます。
60日間ILに登録されると、選手は26人枠だけでなく40人枠からも外れます。
このため、チームはマイナー契約の選手を新たに40人枠へ追加することが可能になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最短登録期間 | 60日 |
| 主な対象 | 重傷者(全選手) |
| 26人枠 | 外れる |
| 40人枠 | 外れる |
60日間ILは「チームに新たな補強の余地を作る」制度として機能しています。
3種類のILの違いを表で比較
ここまで紹介した3つのILを、表で整理してみましょう。
| 項目 | 10日間IL | 15日間IL | 60日間IL |
|---|---|---|---|
| 最短登録期間 | 10日 | 15日 | 60日 |
| 主な対象 | 野手 | 投手・二刀流 | 重傷者 |
| 26人枠 | 外れる | 外れる | 外れる |
| 40人枠 | 残る | 残る | 外れる |
このように、ILの種類は単に期間の違いだけでなく、チームの枠
IL登録がロースター(26人枠・40人枠)に与える影響
故障者リスト(IL)への登録は、単に選手が休むだけではありません。
実はチームの「ロースター構成(選手登録枠)」に直接影響を与え、チーム編成の柔軟性を左右します。
この章では、アクティブロースター(26人枠)と40人枠の違いを整理しながら、IL登録による影響を解説します。
アクティブロースター(26人枠)から外れるとどうなる?
アクティブロースターとは、メジャーリーグの試合に出場できる26人の枠のことです。
選手がILに登録されると、この26人枠から一時的に外れることになります。
ただし、その分チームは代わりの選手を昇格させることができるため、人数のバランスは維持されます。
| 状況 | チームの対応 |
|---|---|
| 選手がIL入り | 26人枠から外れる(試合出場不可) |
| 代替選手の昇格 | マイナーリーグから選手を昇格させて補充 |
| 復帰時 | 復帰に伴い別の選手を降格またはDFA |
IL登録中もチームは26人枠を維持できるため、試合数の多いMLBでは非常に実用的な制度です。
60日間ILが40人枠を空ける仕組み
40人枠(40-man roster)は、球団がメジャー契約を結んでいる全選手を登録する枠です。
通常、10日間ILや15日間ILではこの枠に残ったままですが、60日間ILに登録されると一時的に枠から外れます。
これにより、チームは新しい選手を40人枠に追加でき、補強や昇格が可能になります。
| ILの種類 | 26人枠 | 40人枠 |
|---|---|---|
| 10日間IL | 外れる | 残る |
| 15日間IL | 外れる | 残る |
| 60日間IL | 外れる | 外れる |
60日間ILは、重傷者の長期離脱に対応しながら、チームが新戦力を投入する余地を生む制度です。
「40人枠を空ける=新しい可能性を作る」という点が最大のポイントです。
代替選手の補充と復帰時の調整プロセス
IL登録で空いた枠には、チームがマイナーリーグから選手を昇格させます。
このプロセスにより、IL登録中の穴を埋めながら戦力を維持します。
ただし、IL選手が復帰する際には枠を再調整しなければなりません。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1 | 選手がIL入り → 枠に空きが生まれる |
| 2 | 代替選手を昇格(マイナー→メジャー) |
| 3 | IL選手が復帰 → 枠を再調整 |
| 4 | 他選手を降格またはDFA(戦力外)で調整 |
復帰時のロースター再編はチームの頭を悩ませるポイントでもあります。
シーズン終盤など、誰を外すかの判断が難しくなる場面も少なくありません。
IL期間中の選手待遇|年俸・サービスタイム・リハビリ出場の扱い
故障者リスト(IL)に登録されている期間、選手の給与や在籍日数はどう扱われるのでしょうか。
この章では、IL期間中の「年俸支払い」「サービスタイム(在籍日数)」「復帰手順」について解説します。
IL中も年俸は支払われる?
メジャー契約を結んでいる選手は、ILに登録されていても契約通りの年俸を受け取ります。
つまり、怪我で試合に出られなくても給与は減額されません。
これは、選手が治療やリハビリに専念できるようにするための仕組みです。
| 契約の種類 | IL中の年俸 |
|---|---|
| メジャー契約 | 全額支払われる |
| マイナー契約 | 契約内容による(無給の場合も) |
IL中も安心してリハビリできるよう年俸が保証されているのです。
サービスタイム(メジャー在籍日数)は加算される?
サービスタイムとは、選手がメジャーリーグに在籍している日数のことです。
これは将来の年俸交渉やフリーエージェント(FA)権の取得に関係します。
ILに登録されている間も、通常はこのサービスタイムが加算されます。
| 状況 | サービスタイムの扱い |
|---|---|
| アクティブロースター在籍中 | 加算される |
| IL登録中 | 加算される |
| マイナー降格中 | 加算されない |
IL登録期間もキャリア日数にカウントされるため、選手にとって不利益はありません。
復帰までの流れとリハビリ出場のステップ
ILからの復帰には、一定のプロセスを踏む必要があります。
登録期間を満たした後、医師やトレーナーがプレー可能と判断した場合に復帰が認められます。
多くの選手は、復帰前にマイナーリーグでリハビリ出場を行い、実戦感覚を取り戻します。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1 | IL登録の最短期間を経過 |
| 2 | チーム医師がプレー可否を判断 |
| 3 | マイナーでリハビリ出場(数試合) |
| 4 | アクティブロースターに再登録 |
たとえば投手なら、数イニングを投げながら球速や制球を確認し、野手なら守備や走塁を試してから復帰します。
マイナーのILはより柔軟な運用を目的としている点が特徴です。
MLBとの運用上の違いと選手への影響
マイナーリーグのIL制度では、MLBのように「40人枠」への影響がありません。
また、マイナー契約選手がIL入りしても、年俸は保証されないケースが多く、待遇面にも差があります。
ただし、マイナー選手でもMLBの40人枠に入っている場合は、MLBのIL規定が適用されます。
| 項目 | MLBのIL | マイナーのIL |
|---|---|---|
| 主な登録期間 | 10日・15日・60日 | 7日・60日など |
| 40人枠への影響 | 60日ILで外れる | 基本的に影響なし |
| 年俸の扱い | 原則全額支給 | 契約による |
| 目的 | 選手保護とチーム戦力維持 | 柔軟な選手運用 |
このように、マイナーのILは「チーム都合」よりも「個人の状態」に重きを置いた制度だといえます。
一方で、メジャーへの昇格を目指す選手にとって、IL入りはキャリアの停滞にもつながるため慎重な判断が求められます。
日本人選手のIL入り事例から学ぶ
ここからは、実際にMLBでプレーする日本人選手たちが経験したIL入りの事例を紹介します。
それぞれのケースを見ると、IL制度がどのように運用されているか、そして選手にどんな影響を与えるのかが具体的にわかります。
大谷翔平選手やダルビッシュ有選手のケース
大谷翔平選手は、これまで複数回にわたりIL入りを経験しています。
例えば、右肘の靭帯損傷による60日間ILではトミー・ジョン手術を受け、長期離脱となりました。
また、軽い脇腹の張りなどでは15日間ILに登録され、短期間で復帰しています。
| 選手名 | ILの種類 | 理由 |
|---|---|---|
| 大谷翔平 | 15日間IL | 右脇腹の張り |
| 大谷翔平 | 60日間IL | 右肘靭帯損傷(手術) |
| ダルビッシュ有 | 15日間IL | 右肘の炎症 |
| ダルビッシュ有 | 60日間IL | 右肘靭帯損傷 |
同じ選手でも怪我の重さに応じてILの種類が変わるのがポイントです。
60日間ILに入った場合のチーム対応例
60日間ILに登録されると、チームは40人枠に空きができるため、即戦力の補強や若手の昇格が可能になります。
たとえばダルビッシュ有選手が60日間ILに入った際、パドレスはマイナーから新投手を昇格させて先発ローテーションを維持しました。
このように、IL入りは選手個人の問題でありながら、同時にチーム戦略にも大きな影響を与えるのです。
| 項目 | チームの動き |
|---|---|
| 60日間IL登録 | 40人枠に空きができる |
| 代替選手昇格 | マイナー選手をメジャー契約に切り替え |
| 復帰時 | 他選手のDFAまたは枠調整が必要 |
IL登録はチーム全体のロースター戦略と直結するという点を意識しておくと、ニュースの見方もより深まります。
選手の復帰タイミングを読むことは、監督やGMの意思決定を読み解くヒントにもなるでしょう。
特殊なIL|脳震盪リスト・父親リストなどの存在
故障者リスト(IL)と聞くと「怪我をした選手が入るリスト」というイメージが強いですが、実はそれ以外にも特殊なリストが存在します。
これらは、選手の健康や家庭の事情など、さまざまな状況に対応するために設けられた制度です。
この章では、代表的な特殊ILとその目的を紹介します。
脳震盪リスト(7日間IL)とは?
脳震盪リストは、試合中に頭部へ衝撃を受けた選手を一時的に保護するためのリストです。
登録期間は最低7日間で、通常の10日・15日ILよりも短く設定されています。
選手の健康を最優先に、無理な復帰を防ぐ目的があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 脳震盪リスト(7-day IL) |
| 目的 | 脳震盪や頭部打撲後の安全確保 |
| 最短期間 | 7日間 |
| 対象 | 全選手(医師の診断が必要) |
脳震盪リストは「無理をさせないための安全装置」として運用されています。
特に捕手や外野手など、頭部に衝撃を受けやすいポジションでは重要な役割を果たします。
父親リスト・忌引リスト・コロナ関連IL
メジャーリーグでは、選手の家庭事情や健康状況にも配慮した特別リストが整備されています。
これは、単なる制度というより、選手の人間的な生活を尊重する仕組みといえます。
| リスト名 | 主な目的・期間 | ロースターへの影響 |
|---|---|---|
| 父親リスト | 子どもの誕生や養子縁組の立ち会い(1〜3日間) | 26人枠から外れる |
| 忌引リスト | 家族の危篤や死去による一時離脱(3〜7日間) | 26人枠から外れる |
| コロナ関連IL | 感染・濃厚接触などによる隔離対応(期間不定) | 26人枠から外れる |
これらのリストは、選手のプライベートを守りながらもチーム運営を継続できるようにするためのものです。
MLBは「選手の生活と競技の両立」を重視していることがよくわかります。
このような柔軟な制度があるからこそ、選手は安心してプレーと私生活のバランスを保てるのです。
まとめ|IL制度を理解すればMLBの試合がもっと面白くなる
ここまで、メジャーリーグの故障者リスト(IL)について、基本から応用まで解説してきました。
ILは単なる「怪我人のリスト」ではなく、チーム戦略や選手のキャリアを左右する重要な仕組みです。
最後に、この記事のポイントを整理しておきましょう。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ILの目的 | 選手の保護とチームの戦力維持 |
| 期間の種類 | 10日間・15日間・60日間(重傷者用) |
| ロースターへの影響 | 60日間ILでは40人枠からも外れる |

